風の楽団のインタビュー

風の楽団

山本 公成 フルート、サキソフォン
中村 岳 カホン、打楽器
杉山 八郎 琴、竹、打楽器
えま 二胡、歌
慧奏 ディジュリドゥ、カリンバ、民族楽器
岡野 弘幹 ブスーキ、打楽器、フルート



髙橋 全今日は「風の楽団」の皆様にお集まりいただいて、このCDに関して、色々と聞かせていただく機会をいただき本当にありがとうございます。 まず、もう15年以上前のライブとなるんですが、この時の本番に関して、どのようなことを覚えていたか? CDを聞いて改めて思い出したことがあったか?みたいなことから聞かせていただければ、と思います。

岡野 何しろ15年以上前のことなので、正直記憶があやふやなところもありました。ライブの記憶はあるけれど、どういう演奏をしたのか?までは、細かいところまで記憶がなくて。 それがCDとなった音を聴いて「ああ、そうだった」みたいに色々なことが蘇ってきました。裏ではバタバタしていたことも含めて色々なことを思い出しましたね。

杉山 みんな必死でついて行ってやりきったという感じはありましたね。それぞれのメンバーが朝崎さんの歌に食らいついていたような・・・

中村 すごく印象的だったのが、ラストの曲あたりで、観客の方が 輪になって踊られていたことですね。風楽のステージで観客の方が踊られることは、ほぼないので、そのことはすごく鮮明に覚えています。

えま 私は断片的ですが、よく覚えているんです。勿論本番のこともなんですけど、前日のリハーサルのことをとてもよく覚えています。 朝崎さんがいつもと違っていて面白かったとか。多分風の楽団のメンバー全員とは初めてだったということもあります。 ただその前日一回のリハーサルですごく朝崎さんが安心した感じで、本番はとても良い雰囲気の中で始まりましたね。

えま&慧奏

慧奏 僕もリハーサルの印象が強いんですよ。本番の細かいことに関しては、今回の録音を聴かせてもらうまでは、どういう演奏をしていたか覚えていなかったんですけど。 ただ本番に関してすごく残っているのは、本番が終わった時に岡野くんが、森さんに「こんなんで良かったの?」と聞いていたのが(笑)。 まあ僕たち自身もこの本番をセッティングしてくれたのが森さんだったので、何とかその気持ちに応えたいという気持ちが強くて、 それゆえの岡野くんの言葉だったと思うし、ただその時の森さんの反応が、とても喜んでくれていた感じだったのでホッとしたのを覚えています。

岡野 そういえばリハーサルは、どこのスタジオでやったんだっけ?

杉山 新大阪ですね。朝崎さんが新幹線で着かれて、アクセスの良いところということで押さえたのを覚えています。

山本 僕はこのライブの前後に長野県でレコーディングをやっていて、その間をぬって、当日の早朝に現場に行って本番に参加したんですよ。

山本公成・杉山八郎・中村岳 杉山八郎

髙橋 そうすると公成さんは前日のリハーサルには参加してないんですね。

山本 そうそう、それで車を飛ばして、本番が終わったらそのまま車で帰ってみたいな感じですね。当日は始まる前にちょこっとだけ確認をした感じで、細かいリハーサルは一切していないですね。

岡野 本番に関しては、とにかく皆がついていくのがすごい大変でした。キーとか決めていたけど、本番でキーとか歌の入りとか、え?ということがたくさんあって、とにかく皆で顔見合わせながらやってましたね。

杉山 歌い出したところが(新たな)一拍目、という感じでついていった印象がありますね。

中村岳 中村 岳 中村 僕はかなり前から 加計呂麻島出身の方と一緒に演奏していたので(今も)、奄美の島唄のいくつかは知ってましたが、歌い手によって こうも変わるものかと驚きました。(杉山)八郎くんの言ったように、歌い出された所が頭、と取ってたので、ついて行くのに必死でした。音楽的には変拍子でしょうが、不思議と違和感なく演奏出来たように思います。あと朝崎さんに関しては、衣装や 歌われる佇まい すべて、絵になる方だなと思いました。

岡野 どこが頭かなーと思いながら(パーカッションの中村)岳さんを何度も見てましたね。でも改めてCDを聞いてみると、不思議な変拍子感というか、やろうとしてもできない、不思議な魅力がありますね。あとは、えまちゃんがすっごい綺麗なハーモニーを入れていたのがとても印象的でした。

髙橋 僕は個人的にえま&慧奏さんと朝崎さんと何度かご一緒させていただいたことがあるんですけど、最初からえまさんは朝崎さんの魂に近いところにいる人だな、という印象が強くあります。声も二胡の音色も、すごく自然に朝崎さんに寄り添う感じがあって。
ところで、公成さんは本番だけ、ということですが、どんな記憶がありますか?大変だったり、苦労した思い出はありますか?

朝崎郁恵・えま

山本 本番はとにかく気持ちよかった。僕はあまり苦労したという感じはないです。歌に合わせて即興で乗っていくという感じで、本当に気持ちよかったですね。

髙橋 今回実は朝崎さんのライブとしては珍しく、それまで歌ったことのない歌、初録音の歌が三曲あるんです。朝崎さん本人に「どうしてこの歌を選んだんですか?」と聞いても「どうしてかねー?」という返事だったので(笑)皆様にお聞きしたいのですが、リハーサルとかで朝崎さんが、選んだ歌について何か話されたことはありましたか?

えま 「ホーエラエー」は私にとっても初めてだったんですけど、とても印象的でした。

髙橋 あの歌は男性の声も入っていますよね?

岡野 あれは皆で歌っていたと思います。あの歌詞だけ書いて手元に置いていたような・・・

えま どの歌だったかわからないけど、朝崎さんが「風の楽団」のメンバーの音を聞いて、この歌が合うと思って選んだ、と言っていたのは覚えています。

岡野 あと森さんのコンセプトの中に自然音をBGMとして使って、その空間の中での歌、音楽、みたいなものがあったと思います。そういう意味でこの楽団の音があって、そこに合う歌ということで選ばれたんじゃないかな?と。

山本 僕は喜界島でライブをやったことがあって、その時のことを朝崎さんとお話ししたら、喜界島は特攻隊の飛行機が飛ぶ基地だったという話になって色々なことを聞かせていただいて。朝崎さんが持っている「平和に対する意識」みたいなものをすごく感じたことがありました。

杉山 そう言えばステージ上でも戦争のことを話されていましたね。地球博ということもあってそういう意識がより強かったのかもしれませんね。

朝崎郁恵 & 風の楽団 杉山八郎・山本公成

髙橋 今回このCDがこうしてリリースできたのは、当時朝崎さんのマネージャーでもあった、録音エンジニアの森卓也さんが残してくださった音源のおかげです。森さんの頭の中には、2001年の朝崎さんのレコーディングにえま&慧奏さんをお呼びした時(ユニバーサルからリリースされているCD「うたあしぃび」「FEATURING BEST おぼくり~ええうみ」にその時の録音が入っています)から、朝崎さんと風の楽団の共演というのがイメージにあったような気がしています。森さんとのお付き合いが最も長い岡野さんはそのことについて、どう考えていらっしゃいましたか?

岡野 僕と森さんとの思い出というのは、1990年代にセントギガの番組で、僕がディレクター、森さんがエンジニアという立場で三年間一緒に過ごしていたので、あちこち収録にも行きましたし、一度は「風の楽団」の音で番組を作ってくれたことがありました。その後、風の楽団でアメリカに行った時に森さんもレコーディングエンジニアとして同行したことがあって、風の楽団と森さんとは一緒に育っていったという感覚があります。
きっとそんな中で朝崎さんとの共演を、と森さんが考えてくれたんではないかと思います。

えま そう言えば、今、思い出したんですけど本番が終わった時に、森さんに「朝崎さんと一緒にこうして風の楽団ができたのはすごくよかったです。ありがとうございます。」と言ったら森さんが「また、こういう機会作りますよ」って言って下さったんですよね。

えま 岡野弘幹・慧奏

髙橋 最後になりますが、このCDを聴いて下さるファンの方々にメッセージがありましたら是非お聞かせください。

岡野 弘幹 岡野 はい、この録音はあの時の「風の楽団」が本当に素直に出ている感じで、ドタバタであったり、焦ったりしているのも含めて、その風の楽団が朝崎さんと出会った、そのタイミング、あの時の時間、雰囲気を楽しんでもらえれば、と思います。 岡野 弘幹
山本公成 山本公成 山本 この貴重な記録がCDという形で出せたことに本当に感謝しています。自宅のモニターで聞いても、とても生々しい音で蘇っていて、ライブそのものはあまり覚えていないけれど、すごく良いCDになったなあと思いました。今はコロナ禍ということもありますが、朝崎さんが平和に対して常日頃語っていたことがより生々しいメッセージになっていると思いますので、それが皆様に伝われば嬉しいです。

慧奏 森さんに対する感謝の気持ちというものがとても自分の中では強くて、その森さんがこの音楽に注ぎ込んでいた思いが皆様に伝わったら嬉しいなと思います。音楽の内容としてはある意味レアでマニアックなものとも言えるけど、理屈抜きで感じてもらえたら。そういうものになっているかなと。

杉山 気軽にパッと聞いてグサッと刺さってくれたらいいな、と思います。森さんも常々「あの声は宝だ」とおっしゃっていましたし。

中村 ルーツとなる音楽や文化がある方の音と風楽のように自分なりに楽器を演奏することが、不思議に絡んだ物だと思います。それにしても 歌、声に優るものは ないなぁと思います。

えま 忘れないでね、みたいなことを言われた気がしました。色々な瞬間があるけれど、やっぱり特別な瞬間だったんだな、と。森さんが「もう一度機会を作りますよ」と言ったのは、ある意味このCDのリリースであり、またこの先も何か生まれてくるということを信じています。

インタビュー収録:2021年7月28日